西田征史監督の長編映画、待望の長編映画第2作『泥棒役者』(監督・脚本)がついに完成!本作は、2006年に作・演出した舞台「泥棒役者」を、自身が映画用にリライトし監督をする完全オリジナル作品。主人公・大貫はじめを演じるのは丸山隆平(関ジャニ∞)、はじめが盗みに入る豪邸の家主で新作のアイデアに悩む大御所の絵本作家・前園俊太郎には市村正親。はじめや訪問者たちと織りなす〝噛み合わない〟会話劇のコメディセンスには、まさしく名手ならでは。共演者は、ユースケ・サンタマリア、石橋杏奈、宮川大輔、高畑充希、片桐仁、峯村リエらも参戦。超個性的な役者陣が彩りを添えた西田監督渾身の一篇、観れば笑いに隠された〝愛〟にホロリとさせられるはずだ。

本作で、脚本・監督を務めた西田征史監督が、撮影秘話やキャストへの想いなどを語ってくれた。

◆2006年に舞台版としてこの作品を作られたきっかけと、今年映画化された理由は?

2006年の舞台以降、この作品をきっかけに仕事のオファーを頂いたりしたので、自分の人生が動き出した作品という意味でも思い入れのある作品ではありました。当時の評判も良かったので、いずれ再演などで形にできたらという思いはずっとあったんです。一作目の映画を撮って、二作目を撮りませんか?というお話を頂いた中で、いくつかアイディアは考えたんですけど、これを今映像にしたらどうだろう?というアイディアがふと浮かんだんです。ただ、舞台は一幕劇として笑いを前面に押し出した作品ですが、この作品だったら、今自分が伝えたいメッセージをキャラクターに織り交ぜることで描けるかな?と思ったので提案してみたら、実現しました(笑)。

◆監督が伝えたいこととは?

色々ありますが、ひとつ挙げるとすると、挫折や後悔に対しての向き合い方、いずれにしても明日はやってくるわけです。そこから逃げるのか向き合うのかとか、そういうことを僕自身が40年生きてきて感じることもあったので、書いてみたいなと思いました。

◆大きく変えられたのはどのあたりですか?

舞台版は片桐仁さんが泥棒として主役なんですけど、泥棒という役名で名前もなかったんです。彼がなぜ泥棒になったのか、など書いてないんです。舞台は彼(泥棒)の目線で書いていて、みんなに困らせられる男だけど、振り回されつつもみんなを幸せにしていくというポジションでしたが、今回は泥棒を主役にして、彼の人生を掘り下げた時に、なぜ泥棒になったのか、どうしてあの家に入るのか、その先、屋敷の中で得たものをもって、どこに向かうのかみたいな部分が新しく作っていたところですね。

◆喜劇なので、笑いの“間”が重要になりますが、もともと監督はコントをやられていたので、そこは厳しく演出されたんですか?

笑いは“間”で全部決まってしまいますよね。なので撮影現場で作る“間”と、編集上で作る“間”と両方を意識して使い分けました。あとは役者さんのノリを殺さないようにというか、アドリブはないですけど、生き生きとしたお芝居を引き出せるような演出を心がけました。

◆泥棒の大貫はじめを演じた丸山さんは、関ジャニ∞の中でもギャグをやられたりしていますが、笑いの“間”も含めて俳優としての丸山さんはいかがでしたか?

以前、舞台でご一緒した時から、俳優さんとして素晴らしいなと思っていたので、今回も声を掛けさせていただきました。今回改めて思ったのは、彼は自然体をそのまま芝居に出せる魅力と、俳優としてあくまでも作品を見せたいという気持ちが強いんだなと。こんな芝居をしている俺を見てくれ!という感じは全く無くて、自分がどういう芝居をしたいかではなく、大貫はじめとしてここはどう居たらいいか、という感じでやり過ぎず引っ込み過ぎずという立ち位置をずっと模索してくれていました。それは作品にとってはとてもありがたいことです。それは他のキャストの方にも言えることで、みなさんがそういう気持ちを持って芝居のバトンを繋いで最後のテーマに持って行く、みたいな感じで作品が作れたのはとても幸せなことでした。

◆直接丸山さんと何かお話をされましたか?

リアクションのポジションなので、ここがリアリティを失っていくと醒めてしまうし、でも笑ってもらうきっかけにもなるので、引きすぎてもいけない。なので「もう少し出そうか」とか「今だとちょっとクドいかな」とか、結構細かい話をしました。

◆市村さんのお芝居は、これは素でやってるんじゃないかしら?と思ったほどでした。市村さんを前園に配役されたのは、どうしてですか?

舞台で何度も拝見していて、素晴らしい存在感だなと思うのと同時に、本来とても陽気な方だという印象はあったんです。ですが作品として、特に映像作品は渋い役どころが多いですよね。舞台版の前園役はきたろうさんだったので、また違った路線の前園をイメージした時に、とても陽気でポップでこの屋敷に住んでいそうで、泥棒だと解った後にあのような行動をとる、そういう思考回路を持っているのが成立する人と考えた時に、市村さんの根が陽気な感じがハマるかもなと思いました。たぶん、本来の市村さんは前園よりも明るいですね(笑)。もっとエキセントリックな方です。

◆宮川大輔さんの役どころは、舞台と映画との違いを出すためのエッセンスになったのでしょうか?

舞台版の方では、役としては存在するんですけど、ただ仲のいい泥棒仲間というだけで、恐いポジションではないんです。今回、映画として作り替えるに当たって、4割くらい変えているんです。そのひとつは、則男という存在のキャラクターの変化です。映画では20分に一回展開を持たせようと思っていたので、則男という存在がいることで、時折現実に引き戻されるというか、そもそものストーリーラインを思い出させるポジションとして、映画版では意識して立てていきました。

◆新旧泥棒が共演されていますが、何かお話をされていましたか?

芝居に関しての相談は特にしていなかったと思います。今回は役は同じですが違う人物なので。でも今回はもじゃもじゃヘアを譲ってもらったので、(片桐さんが)その愚痴みたいなことは言ってました(笑)。ストレートヘアが恥ずかしいって。

◆撮影現場も楽しそうですね。どんな雰囲気だったんですか?

和気あいあいでしたね。劇団とまでは言いませんが、みなさん芝居をするのが大好きな方たちだったので、一人が動き出すと自然に稽古が始まっていく、みたいな感じは見ていて面白かったですね。実は撮影中、ちょっと辛いことがあったんですけど、その時にあたたかいメッセージをみなさんにいただいて、その日は5回くらい泣きました(笑)。

◆舞台として完結している作品を映像として作品化するときに、気をつけた点はありますか?

舞台を上演した当時、僕は、事細かに演出するタイプだったんです。こういう言い方、こういう動きでやってくださいって。でも、そうじゃなくてある程度は役者さんを信用して、自分の考えのみを押しつけるのはやめようと思うきっかけになった作品なんです。なので作品に対して僕が思っている正解の演技があったとしても、俳優さんが違うやり方で演じてみても意味として成立したら、それは受け入れようというのは、この舞台作品から意識しています。

今回は、アドリブは一切ないんです。台詞を使わないシーンで皆さんの笑顔を引き出したかったので、そこではアドリブをお願いしましたが、そのシーンも市村さんが一番に盛り上げてくださって。みんなが思わず吹き出して、いい顔が撮れました。台詞上、アドリブが入れづらいし入れると物語が破綻していくんです。なのでアドリブではなく、台本の台詞の言い方や表現の仕方でご本人の色を出していただいたのかなと思います。今回皆さんに対して、改めて素晴らしいなと思ったんです。高畑充希さんもすごいですね。一字一句台本の台詞と同じなんですけど、テイクが変わるとニュアンスを変えて、その場で起こった感情で演じつつ、台詞は同じというのを、何度かやってくれたときは感動しましたね。

それに一幕劇なので作品上どうしても部屋の中のシーンが多くなります。なので少しでも外の空気を感じてもらおうと思って、屋敷の外観を入れたり、あとは屋敷の中ですけど、リビングは青で奥の部屋は赤で、廊下は黄色にしたり、色を変えることで場所が違っていることを意識させて、飽きさせない風景を作りました。

◆映像作品だからの面白さがでた部分は?

「映画らしさってなんだ?」ということで、何を求めてくるかにもよりますが、最近はこういう一幕物の映画はなかったと思うので、今だったらいいかなという気持ちはありました。舞台っぽく楽しんでもらえたらいいかな、と割り切った部分と、でも飽きない工夫はないといけない。前作(『小野寺の弟・小野寺の姉』)は割と長回しを多用していたんですけど、今回は長まわしもやってますけど、ここはリズムで見せようというところは、前よりもカットを割ったりしていて、それが映像らしさかな。舞台は観る側に委ねますが、「ここを観てください」とか「こういう感情ですよ」というナビゲーションは、映像だからこそできたのかなと思いますね。

◆作品の中にでてくる「タマとミキ」という絵本ですが、とてもかわいい絵本になっていますが、イラストのイメージをリクエストされたりしたんですか?

舞台版のベースの絵は僕が描いていて、それをプロの人に描いていただいたんですけど、可愛くなりすぎないというかちょっとブサイクを残したいということで、タマの目も綺麗に描かずにちょっとだけいびつにしているんです。そこは今回一番こだわっていて、なんとなく見ていても不安になるような、でもかわいいと思えるようにとお願いして、絵本作家の朝倉真愛さんにお願いしました。

◆最近の丸山くんとのエピソードを教えてください!

ええと、そうですねぇ(笑)。最新で言うと、3日前に大阪のキャンペーンで2日間一緒にいて、1日目はみんなで焼肉を食べたりして、2日目の東京に帰った日の夜に「今日飲みませんか?」って言われて、2人で飲んで、なんだろうね?さっきまで一緒だったのにねって話をして終ったんですけど、そしたら昨日また連絡が来て、関ジャニ∞の新番組の料理対決で唐揚げをいっぱいもらったらしく、唐揚げがいっぱいあるから家に来ませんか?って。だからいや、行かないよって(笑)。残念だけど用事があったので。でも40歳超えたおっさんに、唐揚げをダシに誘ってくる感じは何なんだろう?と思いつつ、そういう可愛い人ですよ(笑)。

◆再び一緒にやりたいなと思われますか?また次回があるとしたらどういう役をやってもらいたいですか?

そういう思いはあります。彼は割と残虐、凄惨なシーンがある作品が好きだったりするんですよ。なのでそういう役をやってみたらどうかなと思うんですけど、でも僕はそれは不得手なので、その場合はあんまり演出できないなとは言っているんです(笑)。でもやったらハマると思いますね。

◆最後に『泥棒役者』というタイトルがとても印象に残りますが、タイトルに込めた思いはありますか?

自分でタイトルを付けるときは、インパクトとか引っかかりを大事にしていて、本作では知っている単語が2つだけど、組み合わさってみると初めて聞く言葉みたいな。どういう意味なんだろう?と感じてもらえる事がまず、作品の始まりのような気がするので、30歳の時の自分が、いいなと思って付けたタイトルなんですけど。今、Twitterとかで観ると、たまに「映画泥棒」とか間違ってる人もいますが(笑)、「役者泥棒」はまだいいんですけど、「映画泥棒」はちょっとね……全然違うものだし(笑)。でも、それもひとつとして、引っかかってくれたらいいなと思いますね。

 

 

11/18(土)TOHOシネマズ天神、UCキャナルシティ13 ほかにて全国ロードショー

【脚本・監督】西田征史
【出演】丸山隆平、市村正親、石橋杏奈、宮川大輔、片桐仁、高畑充希、峯村リエ、ユースケ・サンタマリア
http://dorobou-yakusha.jp/

Ⓒ2017「泥棒役者」製作委員会