「俳優としても成長できた作品」(草彅剛)
「想像を超えた小鉄を演じてくれた」(市井昌秀監督)

その夏、鈴木家の4人きょうだいは10年ぶりに実家へ戻ってきた。銀行で2000万円を強盗したまま行方が分からなくなっていた両親の“見せかけ”の葬儀をするために──。けれども本当の“目的”は財産分与を行うためだった。映画『台風家族』は市井昌秀監督が12年間あたためてきた“両親への想い”をヒントに創作したオリジナル脚本作品。主演の鈴木小鉄を演じた草彅剛と市井昌秀監督に撮影中の様子や作品に掛ける思いをインタビュー。

◆お客様の反応をどのように感じられていますか?

市井昌秀監督:みなさんの感想の声に台風感があるというか、小さな旋風からどんどん広がっていって、大きくなっている実感はありますね。僕は映画を我が子のように感じていますし、映画は観てくださるお客様が完成させてくれるので、徐々に成長していく様子を感じられますね。

草彅剛:僕も監督と同じで、すごい手応えを感じていまして、それはもちろんSNSを通してたくさんの感想を頂いたりというのもあるんですけど、こうやって実際劇場に舞台挨拶に伺って、その中でこの作品を見終えた方の表情を見ると笑顔が溢れていたり、涙ぐんでいたり、家族で観に来てくださる方もたくさんいて、生のリアクションを感じているので、この作品の魅力や僕たちが伝えたかったことが、本当に伝わっているんだなと実感しています。

◆小鉄という役は一筋縄ではいかない役だったかと思いますが、ご自身の中で描いた小鉄のイメージや撮影される時に監督と相談されたことはありますか?

草彅剛:脚本を読んだ瞬間に、ここまでクズな役をやるのは、初めての経験だったのでどういう風に演じていいのか、少し不安でした。ですが、でも読み終えた後の高揚感というか、ここまで振り切れた役をやったら気持ちいいんじゃないかと思って。最初はイヤな奴だなと思っていたのが、読み進めていく内に愛すべきキャラクターだなと自分の中で変わって来たんです。そうなったことによって、この役は絶対にやりたいなと。他の誰にもこの役は譲りたくないと思いました。そして市井監督に早く会ってみたいなと、どういう方なのか興味がわきました。最初はおとなしい感じ方なのかなと思っていたのですが、今思えば猫被ってたんだと(笑)。でも実際に撮影に入ってみると真剣に向き合ってくれて。愛情を賭けてひとつひとつのキャラクターを作っているということが、僕もそうですが出演者みんなに伝わっていて、最後は演技をしていなくてもみんなその役になれているというか。それぞれの人間性と役が合わさって剥き出しになっている感じがしました。市井昌秀監督が、鬼才現るというか、天才監督が私たちを生み出してくれたのかなと思っています。

◆監督は、草彅さんが演じられた小鉄に対して、どのように感じられましたか?

市井昌秀監督:草彅さんが小鉄を演じることが決まった上で脚本を書いたので、草彅さんがこんなセリフを言ったら面白いな、こんな動きをしたら面白いなということを書いていました。今思えば、背中を押されて書かせていただいたような部分もあります。でもいざ撮影に入ってみたら、自分が想像していた以上にはみ出した小鉄であってくれたというか、これが小鉄なんだと説得させられた部分もありました。本当に台風のような人物だと思っていて、実際の草彅さんとリンクした部分もあるんじゃないかなと思っています。

◆長回しのシーンが多かったそうですが、撮影中に印象的だったことは?

草彅剛:長回しって緊張はするんですけど、時間が経つにつれて、より役に入っていける感じがしました。監督もそれを分かっていらっしゃるのか、より剥き出しの感情で演じられたかなと。最後のシーンについては、監督もたくさん説明をしてくださって、想いが深いシーンになりました。

市井昌秀監督:長回しって色んな事を省略しなくなるので、その人そのもので役をやらざるを得なくなる。その点でも本来長回しが好きというのもあります。緊張感の中でスタッフ、キャストが一丸となって撮影していくというのはワクワクもするし、楽しかったんです。朝日のシーンなどは一発勝負なので、そういうところでみんなで集中できて一体感もあって良かったですね。

草彅剛:長回しの撮影の時に、監督はフレーム外の部分も気にされていたので、特に劇場で観ていただけると、映っていない部分に対して、なんとも言えない想像をかき立てるんです。だから僕らもフレームから外れていても気を抜かないで演技しているんです。映画には映っていないけど、そのフレームの外側も楽しめる映画になっていると思います。

◆個性が異なる共演者の方々でしたが、撮影中で印象に残っていることはありますか?

草彅剛:小鉄というのは、監督やスタッフ、そして共演者の方々、周りの方に引き出してもらった部分が多かったと思っています。それに共演者の方々があまりにもちゃんとされているので、僕はちゃんとしない方がいいかと思って(笑)。小鉄はそれくらいじゃないと演じきれないと思う部分もありましたし、周りのみんなに支えられていましたね。周りのみんなが真面目だから、僕自身焦りもあって、そういう複雑な思いが絡み合ってできたキャラクターだと思っています。

◆監督のオリジナル作品とのことですが、物語のきっかけになったことはどんなことだったんでしょう?

市井昌秀監督:僕は長男ですが18歳の時に故郷の富山県を出ました。両親を田舎に残したまま、あまり実家に帰っていなかったことに罪悪感を感じていて、少し気恥ずかしいのですが、両親に向けた家族の映画を作りたいと思ったのが最初でした。小学校の時に富山ではめずらしく大型の台風がきて、簡易カーポートが吹っ飛んで電線に絡みついて停電になったことがあるんです。夜中に弟と両親の4人で外に出て、台風が去った後の非日常的な光景をみて、不謹慎ですが子供心にワクワクしたんです。はしゃいで、家族4人が結束したような気分になったことを鮮明に覚えているんです。30歳の時に台風と家族を掛け合わせたものを撮りたいと思って、その時からモチーフとして考えていました。

 

◆最後に映画をご覧になる方に一言お願いします。

草彅剛:公開できたことだけでも、本当に幸せでうれしいです。観ていただけると、昨年の夏僕らが命をかけて持っている力を全て出し切っていますので、スクリーンから溢れ出る愛情がみなさんに伝わると思うので、ぜひ劇場でご覧になってください。

市井昌秀監督:映画ってスクリーンと対峙して1人で観るというのもあるけれど、劇場だとたくさんの人と作品を共有している感覚もあると思うんです。そこで笑いも涙も共有してもらえることがあるんじゃないかと思っているので、ぜひ劇場で観て欲しいなと思います。観客のみなさんに育てて欲しいなと思っています。何度観ても気づくことがあると思うので、何度も劇場に足を運んでいただけるとうれしいです。

 

映画『台風家族』大ヒット公開中!

〈PG-12〉
【監督・脚本】市井昌秀
【出演】草彅 剛 MEGUMI 中村倫也 尾野真千子
若葉竜也/甲田まひる 長内映里香 相島一之 斉藤暁/榊原るみ・藤竜也

©2019「台風家族」フィルムパートナーズ