「沈黙の艦隊」「ジパング」などで知られる巨匠・かわぐちかいじ「空母いぶき」を原作に、若松節朗監督が実写映画化。かわぐちかいじ作品の実写映画化は、今回が初となる。本作で、自衛隊初の航空機搭載型護衛艦《いぶき》艦長は、航空自衛隊出身の秋津竜太一佐役に西島秀俊、それを補佐するのは海上自衛隊生え抜きの副長・新波歳也二佐役を佐々木蔵之介らを筆頭にする第5護衛隊群に、藤竜也、村上淳、髙嶋政宏、玉木宏、戸次重幸など日本映画界を代表する俳優陣が集結。息もつかせぬ展開と壮大なスケールで描かれる、戦後、日本が経験したことのない24時間。超ド級のエンタテインメント大作がここに誕生した。

本作で、空母いぶきの艦長・秋津竜太を演じた西島秀俊、コンビニのアルバイト森山しおりを演じた深川麻衣が作品の魅力や撮影秘話を語ってくれた。

◆本作のオファーを受けた時の感想は?

西島秀俊:とにかくファンの多い大人気の作品で、しかも、かわぐち先生の初実写化ということで、やはりプレッシャーが大きかったですね。本当に自分でいいのか、できるのかという葛藤もありました。撮影に入ってからも、毎日がプレッシャーとの闘いで、実際撮影の状況もどんどん苛酷になっていく中、ずっと苦しい撮影をし続けたという感じです。

深川麻衣:長く愛され続けている作品ですし、その作品の実写化で原作にはないオリジナルのキャラクターとして参加させて頂けることになって、すごく嬉しかったです。若松節朗監督の「柘榴坂の仇討」という作品が大好きだったので、初めてご一緒させていただけると思うと、とても緊張しました。

◆脚本を読まれての感想は?

西島秀俊:今作では、24時間の出来事が物語になっています。その24時間の間に、防衛出動が発令されるなど、今まで誰も経験したことのないことが続く。しかもその同時間帯で、マスコミ、政治、コンビニ…僕たち一般人の目線からもその状況が描かれていて、おもしろかったです。

◆自衛隊の隊員の方に話を聞かれたそうですが、どんな話をされたんですか?

西島秀俊:現役の空自海自のみなさんはもちろん、たくさんの方にお話を聞かせて頂きました。任務の事についても、率直に答えて下さって。違う意見をお持ちの方でも“僕はこう思っています”と言うことを、それぞれ仰っていて。それがイメージとかなり違いました。すごく人間的というか。海自の方々は“俺たちは家族だ”という気持ちがすごく強くて。お互い支えあっている仲間という意識を、すごく強く感じました。もっと規律でガチガチというか…もちろん規律はとても厳しいでしょうけども、イメージしていたよりは、はるかに人間的な方ばかりでした。

◆実際に話を聞いて、役作りに反映できたことはありますか?

西島秀俊:優秀なパイロットの条件が「ベストの判断ではなくて、ベターな判断を瞬時に下せる」ということと、「素直さ」だと皆さんが仰ります。秋津には、どこか真っ直ぐな、素直なところがあるんじゃないかと思っていたので、取り入れた部分です。あと実際の戦闘は、指示など聞き漏らしたりしてはいけないので静かな中で戦闘が起きているという話を聞きました。秋津が持つ静けさを演じられたことについても、その話に影響されていると思います。

◆その静かな中で、表情や細かな動きなどで演じていくことは難しくなかったですか?

西島秀俊:「防衛出動」という言葉の意味、そしてそれが発令されて相手を撃墜するということはどういうことなのか、ミサイルが当たったらどれぐらいの衝撃なのかって僕らは誰もわかりません。そういうことを全部検証して、みんなで共通認識を持って撮影をしていると、どんどん追い詰められていきました。

どうやっても状況はどんどん悪くなっていくし、何かあったらもう国が戦争状態になるという中で、もちろん映画はフィクションですけど、演じているとやっぱり追い詰められていくんです。

ただ、そんな時、監督に「秋津は追い詰められる人間じゃない。むしろ笑っていてくれ。この状況でも大丈夫だ、こうすれば戦争は回避できると確信を持ってくれ」と言われました。同時に「秋津の本当の気持ちは、最後に解る瞬間があるので、それまでは秋津の気持ちは周りの人間には一切見えなくていいんだ」と。かなり厳しく演出をされているので、本当に辛かったですね。秋津は怪物なので、僕の生理で動くところは、徹底的に演出で押さえてくださいました(笑)。

◆佐々木蔵之介さん演じる新波は、秋津とは相反する隊員として存在しますが、お二人で何かお話しされたことはありましたか?

西島秀俊:蔵之介さんとは、撮影に入る前に「わかりやすく敵対する二人という風にはしたくない。この二人はあくまで、同じ方向を向いていて、お互い一番信頼し合っていて、ただ、やり方が違う。だから正面きって敵対し合うっていう風にはしたくない」って仰っていて。僕もまさにその通りだなって思っていたので。その部分は、蔵之介さんはすごく注意深く演技されていたと思います。

◆深川さんは、西島さんが演じられる戦闘シーンとは反対で、私たちの日常に近いシーンを演じられていたと思うのですが、実際で出来上がった作品をご覧になられていかがでしたか?

深川麻衣:台本を読んでいても撮影をしていても、今撮っているこのシーンがどうやって間に入っていくんだろうという事はずっと考えていました。繋がったものを初めて観た時に、鬼気迫る状況からコンビニのシーンはガラリと変わるんですけど、でも段々とそれが繋がっていって、24時間という時間の中で、編集部“P-Panel”でも政治パートでも、徐々に点と点が線に繋がっていくんです。台本を読んでいたのも忘れるくらい、観客として没頭して観てしまいました。

◆中井貴一さんとは、お芝居をされる時に、何かお話しをされましたか?

深川麻衣:休憩時間も気さくに話しかけてくださって、お話しさせて頂きました。カメラが回る度にアドリブが飛び出したり、毎回違うお芝居をされていて、私はもう“そこについていくぞ!店長についていくぞ!”という気持ちで、撮影をしていました。

◆西島さんは、完成した作品をご覧になられてどんな感想を持たれましたか?

西島秀俊:政治パートもマスコミのパートも、本田翼さんも実はずっと部屋にいるので、僕はほとんど絡んでいません。第5護衛隊群の他のイージス艦の艦長とも、潜水艦のチームとも声でやり取りしていますけど、実際はお会いしていないんです。だから、完成して、全部のそれぞれの艦の空気とカラーの面白さを感じました。もちろん台本では読んでいるので実際はわかっているんですけど、こういう戦い方をしているんだと改めて知る部分もありました。それにマスコミや政治、そして深川さんが演じているコンビニのシーン。みんながそれぞれ戦っているんだと感じましたし、それぞれが作品として綺麗に結びついていて、出ている僕が言うのも変ですが(笑)感動しました。

◆この作品に参加して、戦争とか平和とかに対する考え方が変わった部分はありますか?

西島秀俊:この原作がスタートした時よりも、今本当に、どんどん現実が原作に追いつき始めているような状況にあって、今当たり前に平和を享受していますけど、実はちょっとしたことで壊れる脆いものだし、すごくかけがえのないものなんだなと、この映画に関わって、改めて実感しました。

深川麻衣:映画って、娯楽であり、フィクションではありますけど、それだけでは済まされないような。もしかしたらこれから先、このような事が絶対に起こらないとは言い切れないし、すごくリアルに感じる部分がありました。だからこそ、絶対に戦争は起こってほしくないと思いましたし、普段自分が生活をしている陰で、様々な人が、わたしたちの生活を守ってくれている。そういう方の存在も感じました。こうやって普通にご飯を食べてお仕事してという生活をできていることは、当たり前じゃないんだなと実感させられました。

◆福岡の印象は?

西島秀俊:アクションが激しい作品は大体、北九州で撮影させて頂いているので、本当に一時期、住んでるんじゃないかと思うぐらい、お邪魔させて頂いて、お世話になりました。こんなに撮影に協力して下さる場所はないです。みなさん本当に温かく、優しく、楽しんでくださる。エキストラさんもたくさん来てくれるんですよ。平日なのに(笑)。本当に感謝しかないです。ありがたい。なので、今後もまた大変な撮影の時には、お邪魔すると思います。本当にこんなに自由に撮影させてくれる所って、やっぱり福岡ですよね。だからみんな来るんですよ!

 

 

5/24(金)全国ロードショー

【監督】若松節朗
【原作】かわぐちかいじ「空母いぶき」(小学館「ビッグコミック」連載中・協力:惠谷治)
【出演】西島秀俊、佐々木蔵之介、本田翼
小倉久寛、髙嶋政宏、玉木宏、戸次重幸、市原隼人、堂珍嘉邦、片桐仁、和田正人、石田法嗣、平埜生成、土村芳、深川麻衣、山内圭哉
中井貴一、村上淳、吉田栄作、佐々木勝彦、中村育二、益岡徹、斉藤由貴、藤竜也、佐藤浩市

https://kuboibuki.jp

Ⓒかわぐちかいじ・惠谷治・小学館/『空母いぶき』フィルムパートナーズ