シアタービューフクオカで絶賛連載中のハイバイ・岩井秀人氏のコラム「岩井の好きな映画」。本誌と併せてお楽しみください!

ハイバイ・岩井秀人コラム【岩井の好きな映画】vol.44「番外編:某ホラービデオシリーズ  その1 」

ちょっと作品名は出せないのだが、某ホラービデオシリーズに、一時ドハマりしていたことがある。
聞けば誰でも知っているそのタイトルは、全部で10巻以上続いているもので、15年ほど前に見た時、その恐ろしさに大盛り上がりしたのを覚えている。
当時僕は仲間達と地元の店舗ビルの1フロアを借りて勝手に劇場にしていたのだが、昼は稽古や本番をし、夜はプロジェクターでそのホラーシリーズを見ては震えていたのだ
そのシリーズの中でも一際怖かったのが、「同級生」だった。実際のタイトルや登場人物の名前は伏せさせてもらうが、内容はこうだ。そのホラービデオの制作会社に、一本のビデオが届く。そこには小学生達が教室で一人ずつ、将来の夢を話していく姿が映し出されていた。「僕は、大きくなったら、野球選手になりたいです」と、恥ずかしがりながら話す男子、「看護婦さんになりたいです!」嬉しそうに話す女子、その中に一人、全くカメラを見ず、俯きがちで小声で何かを喋っている子がいた。工藤、と名乗った。画質も悪くあまり表情は分からないが、なにかしら「負」を感じるその小さなシルエットの工藤さんが言葉の間でふと、こちらを見た瞬間、工藤さんの顔が大きく歪み、片目が大きく開いた口のようになる。映像はすぐに元に戻るが、何が起きたのか分からない。制作会社にそのビデオを届けた林君へのインタビューに画面は切り替わる。林君いわく、ビデオに映っていた工藤さんは小学生の時からとても暗い性格で、なにか不穏な雰囲気があったそうだ。そして、いじめられていたという。「なぜ、このビデオを私たちに?」という質問に林君は「それが…」と口ごもり「工藤さん、この後、小学校卒業してから消息が分からなくなって…死んだって言う噂もあって…」という言葉の音声と共に、さきほどの工藤さんの顔が大きく歪む映像。見ていた我々は、「どうなってんのどうなってんの…」と身を寄せあっていた。
そして映像は、林君の同級生達の集まりへと変わる。消息を絶った工藤さんについて制作会社が独自に調べ、集まった人達は、あまり工藤さんのことを話さない。が、自体は思わぬ方向へ。「工藤さんは暗かった、おかしかった」という林君に、同級生達が「でも…いじめてたの…林君だよね…?」と言い出す。周りも頷き、「私たちは工藤さんのこと、特に変だとも思ってなかったけど、林君、なんであんなひどいことしたの…?」と、林君を責め始める。言葉も出ない林君にスタッフが「実は今日、来てもらってる人がいるんです」。そこへ現れたのは、工藤さん。「ねえ、なんで…わたしが死んだことになってんの…?」と林君を見つめる、消息を絶ったはずの工藤さんに、逆切れし始める林君。もはや霊だ魂だという話ではない。恐ろしいのは我々人間なのだ。
僕はこのビデオを見た後、恐ろしくて眠れなかった。何年経ってもこのシリーズと、そしてこの「同級生」の回のことを、色々な人に「ベスト・オブ・恐ろしい」として伝えて回っていた。それから6~7年経ったある日、事件は起きたのだった!なんと、隔月なのに次回へと続く!

いわい ひでと/1974年生まれ。劇作家・演出家・俳優、ハイバイのリーダー。「ある女」で第57回岸田國士戯曲賞を受賞。

http://hi-bye.net/

◎シアタービューフクオカ vol.68掲載(2017.8発行)