シアタービューフクオカのコラムで誌上最長連載を誇るヨーロッパ企画・永野宗典氏。
ゲストを迎えての対談形式コラム。
webでもダブル掲載!本誌と併せてお楽しみください!


限られた字数制限の中、所狭しとお送りするショートショート対談。今回のお相手は、第61回岸田國士戯曲賞を受賞したヨーロッパ企画主宰・脚本・演出家の上田誠と!

今回のゲスト:上田誠
上田誠/1979年11月4日生まれ。京都府出身。ヨーロッパ企画の代表。すべての本公演の脚本・演出を担当。外部の舞台・映画・ドラマの脚本も手がける。近作では、アニメ映画「夜は短し歩けよ乙女」の脚本など。

永野(以下 )受賞以前と以降と、何か変わったことってある?
上田(以下、) そんなにはないですね。自信がついたぐらいで。
大きい変化じゃん(笑)。自信欲しくても持てないもんだもん。
あー、それでいうと、基本的には僕も自信ない方で。自信ないっていうか、自分では面白いつもりでいるんですけど、それが世間的にどうなんかっていうのは、ずっと疑ってますね。
でも、疑う深さが減った感じ?
上 そうですね、賞をいただけたので、その威光というかオーラがしばらくは貰えるだろうから、作るものがウケやすくなるかもしれないなあ、と期待しています。
威光ねー。僕のとこにも威光というか、余波はあるね。
 あっ、余波ありますか。
嫁が会社で「受賞おめでとうございます」って言われてたり。
上 意外と小さい余波ですね(笑)。賞のおかげで永野さんのところに仕事がきた、とかではなく?
うん、それはまだない(笑)。
上 賞って、学歴と似てるかもなあ、って思っていて。学歴ってやっぱり「長いこと、じわじわ効く」ところがあるなあと思っていて、僕は大学中退してるので、ちょっとコンプレックスではあったんですけど、今回賞をいただけたので、そこが埋まった感じがして嬉しかったです(笑)。
永 劇団での舞台作品は30作以上あって、「来てけつかるべき新世界」は、「新世界」っていう実際の街が舞台で、お客さんの拠り所も多くて、「わかりやすさ」「サービス」が多かった作品な気がして、今回の書き方には抵抗はなかった?
上 抵抗は全然ないですけど、ヘンな言い方すると「ラク」かもしれませんね。原作があるようなもんで。
永 そっか。今までは「世界観」とか「ルール設定」から作ってたし。
上 そうなんですよ、なんでそこは正直、ズルしてるなあ、とちょっと思います(笑)。新世界という街に相当助けられたっていうか。
永 はー!
上 けど、新世界を描いただけじゃん、って言われないように、そこへ来襲するテクノロジー部分の組み立ては、相当頑張りましたけどね。けどやっぱり人気高かったのは「新世界」部分でしたねえ。
永 こういう地続きな世界を描くことに対する興味はある? たまたま「ロベルトの操縦(2011年上演作品)」と「来てけつかる~」を見たお客さんが比較して、「こういうサービス満点な劇もするんですね」って言ってた(笑)。「ロベルト~」は舞台装置自体が走ってるように見せれた上で成り立ってる劇で、そのちょっとした実験性の危うさがそのお客さんには、すごくグッと来てたらしくて。
上 それでいうと、「ロベルト~」の方が確実に唯一無二やなと思いますし、僕は好きです。でも別に「来てけつかるべき~」が嫌いなわけではもちろんなく。あえていうと「普通の劇に見えるやろな」っていうとこだけ、天邪鬼なんで悔しいといえば悔しいかな。地続きの世界をモチーフにする劇は、これは思い上がりでもなんでもなくて「いくらでも描け」ますね。これはどの劇作家でもそうやと思います。写真のシャッターを切るような話なので。それに対して、世界の何らかの原理を抽出したような劇は、いくらでもは描けないんで、そっちをいくつ発明するか、は劇作家としての面白いところですねえ。
永 …やっぱねえ、受賞の余波は、いち劇団員の僕の深層心理にまで及んでてね、今、対談しながら「劇作家先生と喋ってんなあ」っていう意識が入ってくるね。
上 いや、というか、以前からこういうこと考えてたのに、あんまりみんな聞いてくれなかったんですよ(笑)。
永 (笑)。よくないね。いやいや、聞いてたよ!
  僕、言っちゃアレですけど、すげえ考えてますよ。
永 それ、知ってんのよ(笑)。だからね、「受賞」の辻褄があった!みたいな感覚。対談しながら一言一言をいちいち「受賞」に結びつけちゃうっていう、余波はある。
上 いえいえありがとうございます(笑)。
永 いえいえ対談お付き合いありがとうございました、先生。

●永野宗典(ながの むねのり)/’78年生まれ、宮崎県出身。’98年、上田誠らと共にヨーロッパ企画の旗揚げに参加。以降、全作品に出演。

◎シアタービューフクオカ vol.66掲載(2017.4発行)