シアタービューフクオカで絶賛連載中「舌の根も乾かぬうちに…」福岡県出身、TVや映画等で活躍中の俳優・野間口徹さんのコラム。本誌と併せてお楽しみください!

nomaguchi

eps.19

1月の誕生日を迎えた頃に「もう今年は頑張らんけね」と笑いながら言っていた超頑張り屋の祖母が他界した。102歳。大往生と呼ばれる年齢でもあるし、明るく見送ってやれると思っていたのだけれど、意外と、いや、かなり寂しく辛い感情が押し寄せてきて、それに押し潰されそうな自分に驚いた。

間もなくだと言われ病院に駆けつけたときには、もうほとんど意識のない状態で、会話は出来なかったけど、ありったけの「ありがとう」を耳元で叫んだ。初めてキスもした。意識のあるうちに、それらが出来れば良かったという申し訳ない思いや、今まで散々迷惑をかけてきてしまった謝罪は腹の底に飲み込んだ。最後にイヤな思い出を甦らせて逝かれたくなかったから。

間違いなく、僕と姉を半分くらい育ててくれたのは祖母だったと言える。
共働きだった両親の代わりに頻繁に家に来て僕らに美味しい料理を食べさせてくれた。病気の時は添い寝もしてくれた。勉強も、ごくたまに手伝ってくれた。たくさんお小遣いをくれた。

出来ることなら戦争の話題も、しっかりと聞いてみたかった。幼い頃にそれを聞いた時は「もうなんもかんも忘れた」と言われ、ワケが分からず「婆ちゃん忘れっぽいなぁ」と笑い飛ばしてしまったのだけど、辛過ぎて、苦しすぎて、忘れないと生きていけなかったのだと、今なら理解できる。旦那さんを戦争に取られ、母を含めた残った幼い子供たちを女手一つで育てあげるのは容易ではなかったろう。母を産み育ててくれてありがとう。僕まで血を繋げてくれてありがとう。やっぱり謝罪もしたいから謝るよ。

ドラクエのやり過ぎを叱られた時、睨んでゴメンなさい。水着を乾かす為にストーブに近付け過ぎて焦がしてしまった婆ちゃんを、烈火の如く責めてゴメンなさい。財布からコッソリ抜いてしまってゴメンなさい。謝りたい事が多過ぎてゴメンなさい。

生まれてきたことの意味、そんなことを真剣に考える日が自分に来るとは思ってもいなかった。そろそろそういう事も考えなさいと教えてくれているようだ。人間は、どんな人でも独りで生きているワケではないぞと。

猛烈に祖母の最期についてのことを900字ほど書き連ねてきましたが、実は約3年続いた僕のコラムが今回で最終回です。書くにあたって「終わり」という言葉から連想することが祖母のことしか思い浮かばず、ダラダラと長文で思いを綴るよりはと、ここに書かせてもらおうと筆を取りました。拙い文章にお付き合い頂き、そして励まして頂き、ありがとうございました。少しでも皆さんの笑い話の足しになったり、思い出の一部になったのであれば幸いです。またいつか、僕自身が誰かに伝えたい思いや面白いネタのストックが貯まったときには、無理やり頼んで書かせてもらおうと思っています。
ありがとうございました。また!

のまぐちとおる/1973年生まれ、福岡出身。俳優。コントユニット「親族代表」と、劇団「ピチチ5」に所属。映画『シン・ゴジラ』(2016/7/29公開)、『疾風ロンド』(11/26公開)、『海賊とよばれた男』(12/10公開)などに出演。

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シアタービューフクオカ制作側としても毎号楽しく読みながら作らせていただきました。
野間口徹さん、今まで連載ありがとうございました!