シアタービューフクオカで絶賛連載中のハイバイ・岩井秀人氏のコラム「岩井の好きな映画」。本誌と併せてお楽しみください!

ハイバイ・岩井秀人コラム【岩井の好きな映画】vol.37  「映画の内側話」

最近ちょっと立て込んでいて映画を観れていない。
なので、ちょっと内側の話の様なものをしたいと思う。

台本を書いたり演出をしたりもしているが、一応、俳優業もやっている。するとやはり、自分が出ている映画を見ることにもなる。「ゼロ号試写」というやつだ。映画館で公開する前に、スタッフ、キャスト、スポンサーなどが都内のあちこちに実は存在している試写室に集まり、ほぼほぼ出来上がっている映画本編を観る。時々、音の修正が終わっていない、などといった、若干完成していない場合もあるが、まあ2時間だったら2時間の作品としては成立しているものだ。
この試写の時が、大体つらい。なぜ?と思われるかもしれない。自分が出ているんだから、面白がって観ているうちに「ギャピー!自分も出て来て嬉ピー!」と喜べればいいのかもしれない。しかし、そうもいかないのだ。
現場ではほとんどの場合、自分がどう撮られているか、分かっていない。撮影環境によっては、撮影している場所と、映像を確認するモニターまでやたら遠かったりもするし、いちいち確認している暇がないことも多い。いずれにしてもオッケーカットかどうかを決めるのは監督だし。
つまり、我々出演者は、試写で初めて、自分の演技を見ることになるのだ。この気恥ずかしさったらない。現場では確信を持ってやっていたことでも、いざ出来上がったものを見ると、「おい!違う!しかも現場でオッケーじゃないカット使ってるじゃんけ!」となったりする。

初めての映画出演だった本広克行監督『曲がれ!スプーン!』では、試写で叫びそうになった。「違うんです!撮り直してください!全部!」と。しかし撮影から3~4ヶ月も経ち、セットはとっくに取り壊され、跡形もない頃にそんなことを叫んだところで意味がないのだ。あれからは、出来る限りモニターをチェックしようと思った。
逆の場合もある。『キス我慢選手権 THE MOVIE』の現場では、モニターのチェックのしようがなかった。だって、全てのシーンが一発取りで、主演となる劇団ひとりさんは物語も段取りも知らないまま撮影しているという企画なのだから、当然撮り直しはきかない。恐ろしさに打ち震えた。試写の招待状が来たが、行こうかどうかすら迷った。が、暗い気持ちで試写会場に向かい、映画が始まった瞬間にそれは吹き飛んだ。爆笑であった。あの映画に関しては、自分が俳優としての仕事をしたのかどうかも良くわからない。全編が事故の連続だった。ドキュメントと言ってもいいのかもしれない。
ついでに一般公開も観に行き、お客さん達が手を叩いて笑い、突っ込んでいるのを見て、とてつもなく幸せな気持ちになった。

なにがどう転ぶか、分からないものでございます。

いわい ひでと/1974年生まれ。劇作家・演出家・俳優、ハイバイのリーダー。「ある女」で第57回岸田國士戯曲賞を受賞。シアターコクーン7月公演「ゴーゴーボーイズ ゴーゴーヘブン」に出演します。作・演出:松尾スズキ 2016年7月7日(木)~7月31日(日) ほか

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