シアタービューフクオカで絶賛連載中のハイバイ・岩井秀人氏のコラム「岩井の好きな映画」。本誌と併せてお楽しみください!

ハイバイ・岩井秀人コラム【岩井の好きな映画】vol.36  「恐い映画」

昔っから恐がりである。

夜中に駅から家までの道のりで急に怖くなって、なるべく何も考えない様にするのだが、背後に青白いおばあちゃんが着いて来てる気がしてならなくなり、小走りで家にたどり着き、玄関の鍵がなかなか開かなくて焦っていたら背後から「ガサ」と聞こえてしゃがみ込んだ。「はぃあはひゃぁ〜」みたいな声だか息だかしか出なかった。振り向いたらコンビニの袋が風で舞っていただけだったのだが、コンビニの袋だけであそこまで怯えられる自分の感受性に本当に感動する。

だから「ブレアウィッチ・プロジェクト」を友達から「ちょっと、これ、、見てみてくんない?」と、パルク(コピーものなので、白いDVDで)で渡されて見た時は、本当に恐ろしかった。「ちょっと知り合いから流れて来たんだよね、、」とか横から言って来るたびに、戦慄を覚えましたわ。あれ、製品版としてプラケースとかに入ってない方が、圧倒的に真実味が増しますよ。ぜひ、ちょっと汚れたくらいの白DVDで、入れ物も紙袋とか、簡易的なものにして販売することをおすすめします。買った人が友達に渡す時も楽しいだろうし。実際そうやって友人は僕に渡し、僕が「マジで…?マジかよ!!」と言いながら見ているのを、大喜びで見ておりました。

というように恐がりではあるのだけど、恐いもの見たさでそっち系の映画も見ることは見るんだけど、印象に残っているのはその「ブレアウィッチ・プロジェクト」と、大昔になってしまうけど「犬神家の一族」なんかは、トラウマ的に覚えてる。しかし思い出すだけでも美しくて恐ろしい映像美だよね。あれを見るのと見ないとじゃ、日本家屋の見方が違うんじゃないかしら。日本家屋っていうか、和室そのものか。
こないだも香川のホテルで和室に泊まらされ、意味不明の廊下があって、「何のための廊下だろう」って奥に進んでいったら古ぼけて黄ばんだ小さな冷蔵庫だけ置いてあって、「近づいたら絶対だめだ」って思ったし。

テレビでやってた「明智小五郎シリーズ」も怖かった。今考えると毎回毎回「緑色の美女」とか「~~の美女」っていう風なタイトルで、殺されてる女の人が必ず真っ裸だったのは、エロ狙いもあったんだなあと。巨大な水槽に浮遊してる裸の女の人の死体がカメラ目線だったりするのも、メチャクチャな感情になりながら見てた。
あとは音楽。ちょっと形容しがたいんだけど、ブウ~って低い、人の声に近い音が、ブウウウイイィィィ~~って、フレットレス?な感じで持ち上がっていくやつで、それがもう不気味で不気味で。地下に住んでた筒状の長い生き物が、急にのけぞった、みたいな恐怖でして。小学校の音楽室にあったシンセサイザーでその音が出せたとき、ぶったまげて何度も鳴らしまくったんだけど、音楽室で恐怖してるのは僕だけだった。みんな見てなかったのか?
「水槽の中の美女」を!最近では夜、家に帰って来て暗い中、台所で歯を磨いてたら、暗がりから我が娘が寝ぼけて走って来たのが一番怖かった。「んう〜っ!」って歯ブラシ噛み締めながら、何回か足踏みしたわ。

 

いわい ひでと/1974年生まれ。劇作家・演出家・俳優、ハイバイのリーダー。「ある女」で第57回岸田國士戯曲賞を受賞。シアターコクーン7月公演「ゴーゴーボーイズ ゴーゴーヘブン」に出演します。作・演出:松尾スズキ 2016年7月7日(木)~7月31日(日) ほか

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