シアタービューフクオカで絶賛連載中「舌の根も乾かぬうちに…」福岡県出身、TVや映画等で活躍中の俳優・野間口徹さんのコラム。本誌と併せてお楽しみください!

nomaguchi

eps.16

リバウンドしてます。身体の話ではなく、心の。昨年、自分にノルマを課すように「人と会う」ことを心がけて過ごしたのですが、とにかく向いていない。40歳にもなって「人見知り」なんて口が裂けても言いたくなく、それならば克服してやろうと思い立ったのですが、改めて自分の環境適応能力の低さに愕然とするばかり。

今までは飲みに行くことも殆どなかったのですが、お仕事で御一緒した役者さんや、スタッフさんを「飲みませんか?」と勇気を振り絞ってお誘いし、どうしてこの仕事を選んだのかという、ありきたりな疑問から、趣味・特技・嗜好にいたるまで、とにかく相手に興味を持つという考えで接してみました。おかげで少しずつ相手の懐に入る方法を体得できた気がします。

がしかし、僕の最大の問題点は、他の部分にありました。場所に慣れないのです。人と会うのは良いんです。ほぼほぼ大丈夫になったんです。でも、その会ってる「場所」に落ち着いていられないのです。畳の座敷のある古い居酒屋ならまだ2時間くらいは大丈夫なんですが、お洒落なソファの置いてある個室居酒屋やカフェ、どう座れば良いのか未だに正解が見えない高さのスツールのカウンターバー、そして心臓が痛くなり、一刻も早く外の空気を吸いたくなるのが、人のお宅。
自分の家でも決まった場所以外に座ることがないのに、初めて伺ったお宅に、僕の座る場所なんて見付かるはずがありません。キョロキョロ周りを見回し、やらなくて良いことをやり、どんどん挙動不審になってしまうのです。結果、だいぶ変わった人という印象だけを残して嵐のように退散するハメに。これについては謝罪の言葉しか出てきません。その節は申し訳ありませんでした。
それでも自分に言い聞かせて、あらゆる人と何度もコンタクトを取り、会い、話しを繰り返した結果、今ですよ。全く家から出たくない気持ちが以前よりも膨らんでしまう結果に。まさにリバウンド。ある瞬間に、スンって気持ちが途切れちゃったんですよね。

今まで、ダイエットに挑戦して断念している人は根性が足りないんだと思っていましたが、やっと気持ちが分かりました。分かる。簡単には痩せられないよね。痩せたい気持ちはあるけど、ジムが合わないんだよね、身体に。自分にピッタリのジム、方法、インストラクターがいないんだよね。分かるよ。でも痩せたいって口から出ちゃうんだよね。良いよ。言うのはタダだから。今日が最後の焼き肉とか、明日からはラーメン食べないとか、オールオッケー。その内ウマくいくさ。

僕もまた明日から、いや、明日はアレなんで、来月くらいから人と会うようにします。ダイエット失敗する人の言い訳と似ていることはわかっているけどもね。今年の夏、いや、冬までにはなんとかします。頑張る!頑張りたい!頑張れるはず!たぶん!

のまぐちとおる/1973年生まれ、福岡出身。俳優。コントユニット「親族代表」と、劇団「ピチチ5」に所属。1月3日(日)19:30〜放送予定の正月時代劇「吉原裏同心〜新春吉原の大火〜」(NHK)に出演。