シアタービューフクオカで絶賛連載中「舌の根も乾かぬうちに…」福岡県出身、TVや映画等で活躍中の俳優・野間口徹さんのコラム。本誌と併せてお楽しみください!

nomaguchi

eps.12

 同年代の俳優さんと仕事をしたとき、よく話題になるのが「健康・頭髪の悩み」「プロレス」「ギャンブル」「アイドル」のどれかです。なかでもアイドルの話は、自分は○○派だったという主張だったり、独自のアイドル論だったり、多岐に渡ります。でもゴメンナサイ…他の話は着いて行けるのですが、この話題にだけは全く知識が無いんです…。その頃の僕は、毎日スイミングクラブの選手クラスに通っていたので、テレビを見る習慣が殆ど無く、芸能事情に疎かったのです。記憶にあるのは世界水泳とオリンピック。なので、好きなアイドルを強いて挙げろと言われたならば、80年代のスーパースター「ミヒャエル・グロス」と「マット・ビオンディ」の2人を口にするでしょう。
 2人の直接対決はソウル五輪。前大会のロス五輪で、世界新での金2個と惜敗の銀2個を獲得しているグロス。ロスでは4×100mリレーでの金1個だけだったが、その後の4年でメキメキ頭角を現してきたビオンディ。ピークを過ぎたと言われているグロスと全盛期と思われたビオンディ。「アホウドリ」と言われたほど、リーチの長い美しいフォームでバタフライを得意とするグロス、お世辞にも奇麗と言えない変なリズムの泳ぎ方で自由形が得意のビオンディ。ヒョロッとしたエヴァンゲリオン体型のグロス、ガッチリとした初代ガンダム体型のビオンディ。
 様々なテーマで対比される2人の対決に、世の水泳キッズが「俺はグロス派」「僕はビオンディ派」と熱く激論を戦わせていたのです。そのはずです。僕の周りだけかも知れません。あれ…?僕だけかも知れません…。友人達が、聖子ちゃん、明菜ちゃん、キョンキョン、はたまたその後におニャン子だー等と言ってる時に、僕はビオンディの泳ぎ方の真似をして、汚いフォームで泳ぐなと叱られたり、グロスのような長い腕になりたいと思い、腕を引っ張ってもらったり、選手は全身の毛を剃っていると聞いては、それを模倣してみたりと、特殊な青春時代を送っていたのでした。
 気になる直接対決の結果は、ビオンディに軍配が上がりました。これはスポーツ選手全般に言える事ですが、特に水泳選手のピークというのは一瞬なんだという事を、このとき学びました。ずっと勝ち続けるのだろうと思っていたビオンディですら、次の五輪では惨敗でしたから…刹那という言葉も、この頃インプットされました…

 あれ?違う!アイドルの話が出来るようになりたいと思い、最近、80年代の歌手のベスト盤のCDを借りまくっているという話をしようと思っていたのに!大好きな水泳の話にシフトしてしまった!すんません、それはまた今度。
 因みに色々聴いた結果、僕は中森明菜さんに曲を提供している、井上陽水さんが好きだという事が分かりました。

のまぐちとおる/1973年生まれ、福岡出身。俳優。コントユニット「親族代表」と、劇団「ピチチ5」に所属。ドラマ「アイムホーム」岩下昇役(テレビ朝日系)、「闇の伴走者」寺田幹男役(WOWOW)、舞台 KERA・MAP「グッドバイ」(9月上演予定・世田谷パブリックシアター)に出演。