シアタービューフクオカで絶賛連載中「舌の根も乾かぬうちに…」福岡県出身、TVや映画等で活躍中の俳優・野間口徹さんのコラム。本誌と併せてお楽しみください!

nomaguchi

eps.11

「野間口さんがいません」「野間口さんがいたことに気付きませんでした」「違う人を野間口さんだと思ってました」と、よく言われます。存在感の無さが際立っている41歳、後厄の野間口です。今回は僕の存在の薄さエピソードをいくつかご紹介します。
 早朝ロケの場合、ロケバスが停まっている場所に集合になるのですが、その場所というのが、あらゆる撮影班が利用する場所なワケです。なので毎度毎度、激しく緊張して向かいます。だって気付いてもらえない事が多いから。4台ほど並んだロケバスの前に立つスタッフさんの前を「役者ですよー」って顔をしながら2往復くらいして、やっと気付いてもらえます。すぐ気付いてもらえた日はラッキーデイです。そこで仕事が一つ終えたような気分にすらなります。
 ある時には、ベンチに腰掛けている僕の前を、衣裳スタッフさんが誰かを探してる雰囲気で何度も通り過ぎていました。何か緊急な事が起きたのかなと思って見ていると、別のスタッフの一人に小声で何か言っています。「野間口さんってどこにいる?ちょっと見失っちゃったんだけど…トイレかな…?」って…いやいやいやいや!いますけど!ずっとここに!という心の叫びは口をつくこともなく、「あ、なんかゴメンナサイ」と言ってました。そして衣裳さんからは「あーいた!どこ行ってたんですかー!」という衝撃の一言を頂きました。ええ、泣きながら着替えました。
 これまた違う現場で、一つ目の場所から二つ目の場所まで、かなり大移動しなければならない事があったのですが、あまりに長いので、トイレがてらコンビニに立ち寄る事になりました。もう分かりますよね?トイレを済ませ、飲み物を買い、外に出てみると、ロケバスが…いない…!まさかと思い、ギュッと目を瞑ってグイと開きましたが、やはり無い。照明スタッフさんの車が、たまたま通りがかったので猛ダッシュで駆け寄り「すみません、置いて行かれちゃったんです…」と告げると、アレですね、人間って完全に予想外の事が起こると黙るんですね、無言で座席を用意してくれました。その後、ロケバスに追い付き事なきを得ましたが、「降りられていたんですねー」というスタッフさんの一言に愕然としました。乗る事はおろか、それより前の段階、降りた事すら気付かれてなかったという事実に。
 バラエティの現場では「戦場で歩いていても撃たれなさそう」などと言われた事もあります。他にも細かく沢山あるんですが、書ききれないし、悲しくて震えてきたので割愛させて頂きます。ただまぁ最近は、気付かれなくて得する事の方が多いような気もします。
 最期に、「親族代表」の福岡公演にいらして頂いた福岡及び近県の方々、誠にありがとうございました。皆様の目に僕が映っていたかどうか、それだけが心配です。

のまぐちとおる/1973年生まれ、福岡出身。俳優。コントユニット「親族代表」と、劇団「ピチチ5」に所属。映画「くちびるに歌を」(2/28全国公開)、「のんびりゆったり路線バスの旅スペシャル」(NHK総合 3/19)、「戦力外捜査官スペシャル」(日本テレビ系 3/21)に出演。