シアタービューフクオカで絶賛連載中のハイバイ・岩井秀人氏のコラム「岩井の好きな映画」。本誌と併せてお楽しみください!

ハイバイ・岩井秀人コラム【岩井の好きな映画】vol.25 「アナと雪の女王/おおかみこどもの雨と雪」

アニメ2本立て。まずはやっぱり「アナと雪の女王」です。
なんか初めて「アメリカンアニメの、妙にリアルな表情の違和感」を感じない作品だった。活発な妹、アナの左右非対称な表情が、凄く良かったんだと思う。あれは愛さずにはいられないキャラだ!だって、何年かぶりに城の外に出ただけのシーンで泣いちゃったから私。CGも凄いセンスだと思う。姉のエルサが城を出て、山に行って氷でどんどこお城作った時も、「こりゃあ鬱屈してた姉ちゃんも自由を感じるわ」って一撃で共感できちゃうくらい美しく楽しい氷の質感の表現なのね。あれはすごいわあ。氷だけすごいリアルなの。あと、前フリなしで隣国の王子様が悪いやつだったのもショッキング。ディズニーってだいたい、早めにそういうことを観客に教えてくれる気がしてたから特に。「おまえ!嘘だろ!?」って素直に腹立ちました。神田沙也加様が素敵すぎです。
原作だと姉と弟、それとは別で雪の女王がいる、っていうもので、女王によって弟が心を凍らされちゃって…っていう筋になってるはずなんだけど、うまいこといじりましたわ。シンプルに姉妹にしたことで、一人の心の中の「どんどん外に出て行きたい」と「でも誰かとすれ違ったり、傷ついたりしたくない」って葛藤として見ることも出来るという深み。やっぱりハリウッド流の、脚本家達が競ってあらすじを出して、制作会社がその中から脚本家を決めるという、いわゆる「あらすじコンペ」とかから選ばれてるのかな。ディズニーとハリウッドはまた違うのかしらね。

あと、いまさらながら「おおかみこどもの雨と雪」を見た。
なかなかにこういう奇跡的な映画には出会えないと思う。単純にアニメとくくれない、突如実写がまじってたり、線画の色が赤みが強かったりだとか、アニメとしても独特な表現が多くて、でもそういった新しいことが変に目立ってしまうこともなく、作品に必要なものとしてちりばめられている。面白い。凄い挑戦。そして成功。おめでとございますですよ。「子供を持たない人にも入り込めるように」という考えから生まれた、と書かれていたけど、まさに「おおかみこども」という設定が、本当にドンピシャ。「子供がハナから多くの人達にとけ込める訳ではない」ということが、とても上手に表現されている。子供を持つ僕としても、「これは別におおかみこどもに限ったことではない」と思いながら見ていけるし。あと、子役の声の人達、うますぎる。どうやって演出つけたんだろう。びっくらこいた。
こういうものを見るとやはり、我が娘のことを思ってしまうのが父の常。7歳の娘にとっては、外の世界のコミュニティは「小学校」しかない。つまり、小学校の人間関係で上手くいかなかったら、もう後がない、断崖絶壁だ。親としては祈るしかない。どうか上手くいきますように。でも上手くいかせようとしすぎて、我慢もしすぎないように。と。「おおかみこども」のお母さんの様に、自分の子が、いわゆる社会とは逸脱したところに生きることを決めた時にも、元気に背中を押してやれるか、なんてことを考えてしまうのだった。さすがに山にこもりには行かないだろうけども。

いわい ひでと/1974年生まれ。劇作家・演出家・俳優、ハイバイのリーダー。 「ある女」で第57回岸田國士戯曲賞を受賞。5/24公開の映画「青天の霹靂」出演中。ハイバイ最新作「おとこたち」7月16日(水)19:00、7月17日(木)14:00、18:30@西鉄ホール
http://hi-bye.net/