舞台をはじめTVやCM等でも活躍中の竹井亮介さんのコラム。本誌と併せてお楽しみください!


vol.10
私には、ネガティブな考え方をしてしまうところがあります。
仕事においては、ダメ出しがなかったり、すんなりOKが出たりしたときに、自分があまりにもできないから、さじを投げられたのではないかと思ったり。日常においても、街ですれ違う人と目が合うと、そんなに自分の見た目はおかしいのだろうかと思ったり。電車で何気なく座ったとき、隣の人が迷惑そうにしているような気がしたり。うんざりしますよ、自分でも。
今から8年前、40歳を迎えた私は、ネガティブな自分に別れを告げたいと思っていました。まずはできることから実践していきたい!だが、何ができるだろう。考えているうちにふと、よく言ってしまう言葉の中にネガティブな要素たっぷりのものがあることに気づきました。ネガティブな卑屈人間がつい口にしてしまう言葉。そうです。「どうせ俺なんて」という、自分を卑下するパワーワード。気づくと吐き出してしまっているこの言葉を、禁止すればいいのではないか。
だって、こんな言葉を言っていたらダメだもの!残りの人生を前向きで明るいものにするために、生まれ変わらなくては!人生の折り返しに差し掛かっていた私の中で、そんな想いが溢れてきていました。もっと自分を好きになって、自分という存在に自信を持って、しっかりとした足取りで、惑うことなく生きていくぞ!そのために、「どうせ俺なんて」という言葉を絶対に言わないようにするんだ!それは、強い、強い、決意でした。
その翌年の初詣で、神様にもきっぱりと誓いました。ちょうどその年の秋から冬にかけての約2か月間、小林賢太郎演劇作品「振り子とチーズケーキ」という舞台のツアーが予定されていたのですが、公演を催せば何万ものお客さんを集めてしまう小林賢太郎氏とのふたり芝居で、プレッシャーも相当なもの。弱い心ではとても乗り切れない。ですから、もちろん胸に抱いたあの強い決意はそのままに、必ずやこの公演を成功させたい!そんな心意気で、この作品に挑もうとしていたのです。
ところが…。
この作品で私が発するセリフの中に、「どうせ俺なんて」という言葉が2回ほど登場してしまっているではありませんか!公演数だけでも確か54ステージだったので、稽古やらセリフ覚えのためのブツブツやらを含めると、確実に100回以上は「どうせ俺なんて」って言っちゃってますよ!神社で「二度と言いません」と誓ったその年に、100回以上もこのNGワードを発してしまっただなんて、誓われた神様はどう思ったことでしょう!お百度参りならぬ、お百度裏切りやないかーい!!
そういえば、神様への裏切りを働いた翌年のオーディション、全部ダメだったような気がします。本当の意味で、オーマイガー!!
あぁ、人生って難しいですね…。

●たけい りょうすけ/早稲田大学在学中は、劇団「木霊」で活動。卒業後は様々な舞台を経験し、1999年、コントユニット親族代表を結成。ぽっちゃりとした見ためを活かした朗らかなキャラクターを演じると、場を和ませ、画面が一気にあたたか味を帯びる。その安定感は、各方面の監督からも信頼が厚い。
【TV】ETV「ボキャブライダー on TV」 【映画】東映まんがまつり「映画 おしりたんてい ~テントウムシいせきの なぞ~」

◎シアタービューフクオカvol.86掲載(2020.8発行)