シアタービューフクオカで絶賛連載中のハイバイ・岩井秀人氏のコラム「岩井の好きな映画」。本誌と併せてお楽しみください!

ハイバイ・岩井秀人コラム【岩井の好きな映画】vol.59「・・・・・・」

「岩井の好きな映画」というタイトルなのに申し訳ないが、近頃と~んと、映画を見ていない。映画だけでなく、本業である演劇も見ていない。なので、タイトルを期待して映画のお話をご期待の方は申し訳ないが、読み飛ばしていただきたい!
こうしてあっちゃこっちゃの舞台に出させてもらったり、自分で演劇を作ったりなどしていて、出会う俳優さんや作り手の人も多いのだが、その中に稀に、僕と同じように「な~んも見ない」という人は、ちょいちょいいる。
僕が演劇を作る人間だからか、「最近見た舞台で面白かったものは?」と聞かれることもあるのだが、「いやあ、ほとんど舞台見ないんですよね、、」と、半ば「すんません」な雰囲気で言わなくてはいけない。が、正直なところ、「いや、他人の作品見て面白かったら、自分で作らなくてよくないか?」と思っているフシもある。

去年の暮れ頃から何をしていたかというと、会社を作っていた。
今まで10年近くマネージメントしてもらっていた会社を辞めて、自分の会社を作り人を集め、事務所を借りて作戦会議をした。これまで「演劇を作る」が本業だったし、多分これからもそれは大きな比重を占めることになるんだけど、これまでの「小劇場である程度有名になったら中劇場の作・演出をするようになり、やがて商業演劇で芸能人と一緒に作・演出をする」という流れに、何度か乗りかけたりちょっと乗ったりしたのだが、そこで行われるやりとりに不毛さを感じたというのも大きい。「まず動員」からキャスティングが始まるのが、大きな理由だ。いやんなっちゃう。
さて、新しい会社では主に「演劇を作る」というより「別の角度から演劇を面白がる」というようなことをやっていきそうだ。プラス、これまでは僕の過去の「引きこもり」とか「家族問題」などを演劇作品を通して「演劇のお客さん」と共有してきたけど、実際に問題の渦中にある人たちに向けて「直接岩井が」話していった方が、現実的には有効なことなので、そういったことも進めていく。なんとなくTwitterで「引きこもってた前後のこと、話したいのですが、どこか手を上げてくれる場所ありませんか~?」と呟いた所、かなり多くの媒体や福祉施設や大学などから声をかけてもらった。当事者たちと話すことの有意義さと、問題を共有しながら僕自身も過去に別の視点を持てることは、大きな感動になる。

「別の角度からの演劇」は、つい最近、ようやく実現した。「いきなり本読み!」という企画で、集まった俳優が、初見(初めて読む)の台本をお客さんの前で読み合わせする、という企画で、芸能の本場、浅草の東洋館にて、皆川猿時さん、岸井ゆきのさん、今井隆文さん、後藤剛範さん、そして当日「先日初舞台を終えたばかりの初心者」(笑)として、神木隆之介くんにも出てもらった。「何を読むかさえ分からない」状態の俳優が、渡された台本を読む。1シーン読むごとに、役や台本の物語について話し、理解を深めた上でもう一度読む。その変化に爆笑しながら感心し、お客さんたちはほぼ常に笑いながら、演劇が作られていく過程、俳優がいつもどんなことを考えているか、などを考えながら、演劇を含む「ものづくり」の横顔を見られるという、とても貴重な場になった。あくまで面白おかしく、それでいて演劇や映画、そして俳優という生き物の面白さを伝えられるような企画を、どんどんやっていきたいと思っている。

いわい ひでと/1974年生まれ。劇作家・演出家・俳優、ハイバイのリーダー。「ある女」で第57回岸田國士戯曲賞を受賞。

http://hi-bye.net/

◎シアタービューフクオカ vol.83掲載(2020.2発行)