舞台をはじめTVドラマ等でも活躍中の女優・池谷のぶえさんのコラム。本誌と併せてお楽しみください!

vol.18

結局、矯正マウスピースを開始。長年の、舌で前歯を押し続ける癖のため開いてしまった歯の隙間を、元にもどすための矯正です。矯正といえば歯にワイヤーを取り付けるイメージがありましたが、いまはこんな手段もあるのですね。
1段階のマウスピースで、食事をとる時以外の1日22時間装着して約1週間。これを11段階くらいクリアしていかねばなりません。なので、順調にいけば3ヶ月くらいで終わりますが、1日22時間というミッションをクリアするのがなかなか難しい。そして、マウスピースを開始してから気づきましたが、歯が服を一枚着ているような感覚があるため、ちょっと暑い…。歯も暑さを感じるなんて思ってもみませんでした。そして、これから私の宿敵・真夏がやってくるではないですか。6月から始めたので、順調にいっても終わるのはきっと9月過ぎあたり。まさに真夏どまんなかをマウスピースと乗り切らなければならない…しくじった、真冬に開始すればさぞかし暖かかったでしょうに。
しかし舌の力って、歯を動かすほどのパワーなのですね。いくら長年かかっているとはいえ、自分の舌のせいで自分にお金をかけることになるとは、自分の舌じゃなかったらどうしてやりましょう。ですからあれですよ、テコでも動かない重い家具を動かしたくて困っている方がいらしたら、毎日舌で押したらいいですよ。いずれ動きます。舌はそれだけのポテンシャルを持っているのだと、この歳になって教えられました。どちらの舌がよりパワーがあるかを競う、舌相撲とかも見てみたいですね…と書いてはみたものの、それはもはやディープキスですね。やめておきましょう。
しかし、歯の矯正もそうですが、いろんなものが進化してゆきますね。最近久しぶりに「男女7人夏物語」を見返していたので、携帯電話ですぐ連絡がとれることや、コンビニが当たり前にあることや、24時間ATMからお金を引き出せることなんて、たった35年前くらいには身近になかったことですものね。それはそれで、それが日常だったのでさして不便も感じていなかった気がしますが、いまそれらを取り上げられたらしばらくはアワアワしてしまいそうです。きっと私が後期高齢者になる頃には、ワイヤーの矯正も、矯正マウスピースも飛び越えて、エアー矯正みたいなすごいものが開発されているのでしょうね。なんなら、歯を矯正するなんておしゃれじゃない! みたいな世の中になっているかもしれませんし。歯なんてなくてもいい世の中になっているかもしれません。なんなら脇の下に歯が生えて来る時代になっているかもしれません。いや、それって…進化なのかしら…。

いけたにのぶえ/1971年生まれ、茨城県出身。俳優。幻の劇団「猫ニャー」出身。舞台を中心に活動中。

◎シアタービューフクオカvol.79掲載(2019.6発行)