舞台をはじめTVドラマ等でも活躍中の女優・池谷のぶえさんのコラム。本誌と併せてお楽しみください!

vol.17

最近、ずっと頭の片隅にあるのは終の住処についてです。数年前に「70歳を過ぎたら独り身の高齢者に貸してくれる家などない」と脅され、ああ…あと20年もしたら私はどこに住めばよいのでしょう。
私の世代が後期高齢者になる頃、年金もいったいいくらもらえるのだか、まったくもらえないのだかわかったものじゃありませんし、とにかくいま出来ることといえば、お金持ちの家にお嫁に行くか、自分がお金持ちになるか、とてつもなく魅力的な人間になっていろんな人に助けてもらうか、この3つくらいしか手立てがありません。お金持ちの家にお嫁に行くことと、とてつもなく魅力的な人間になることは表裏一体のような気もしますし、私にとっては来来来世になっても不可能な境地に思えます。そうなると、おのずと自分がお金持ちになる以外未来がありません。
しかし、どんどんポンコツになっていく身体。先日などは、歯医者の定期健診で「舌で下前歯を押す癖があるので、このままいくと歯間がどんどん開いていく一方です」と言われ、日中つける目立たないマウスピースと歯裏の矯正ワイヤーを勧められた。「どのくらいの期間でよくなるんですか?」と聞くと、「マウスピースは半年から1年くらいです。その後整った歯がまた開かないように、矯正ワイヤーを歯裏につけます」「それはどのくらいの期間ですか?」「一生です」。
一生…一生って…いつまでよ。そりゃ毎日「一生」は短くなってはいくけれど、最終的には住む家がないのに矯正ワイヤーをつけたままの後期高齢者の自分…最後の財産は矯正ワイヤーだけなのかしら…なんなら、最後私を看取ってくれるのは矯正ワイヤーなのかしら…ひとりぼっちよりいっか! いいもんか!
秋には、消費税も10%になります。それまでに持ち家をどうにかしようと動いた方がいいのでしょうが、そんな気力もありません。そしてうかうかしていては、矯正ワイヤーだって10%かかってしまいます。あと半年ほどの間に大金を払っておくもの…あれこれ考えた結果、12~3年使っていた扇風機を新調しました。最近の扇風機はすごいんですね。部屋干し脱臭機能とか空気清浄機能とかついてるんですね。私が大して成長してないこの12~3年の間に、扇風機がこんなにも成長しているなんて…。
扇風機を新調してから気づいたのですが、冷蔵庫、洗濯機、レンジ…いずれも20年くらい使っていました。新調するにも、20年間どれだけ進化しているかと思うと怖いです。なんなら、冷蔵庫や洗濯機やレンジに永住できるように進化していたりしませんか?

いけたにのぶえ/1971年生まれ、茨城県出身。俳優。幻の劇団「猫ニャー」出身。舞台を中心に活動中。

◎シアタービューフクオカvol.78掲載(2019.4発行)