舞台をはじめTVドラマ等でも活躍中の女優・池谷のぶえさんのコラム。本誌と併せてお楽しみください!

vol.16

次にこのコラムが掲載される時は、もう平成じゃないのですね。平成になったのは、私が高校2年生17歳のお正月明け。いろんなお店が喪に服してお休みだった記憶があります。
そんな中、友人の家に行く約束をしていた私は、唯一開いていたドーナツ屋さんでドーナツを買っていきました。私の平成の幕開けは、ドーナツとともにありました。次の年号に変わる時、私は何を食べているのでしょうか。もう17歳じゃないからそうそうドーナツもたくさん食べられません。なんなら、ドーナツの穴用にくり抜いた部分くらいの量で十分です。もしかしてドーナツのあの穴は、もうひとつの小さなドーナツを作るための穴なのでしょうか? 歳を重ねたある日、高齢者ドーナツ制度なる通知がひっそりと役所から届き、ちっちゃいドーナツが買える店一覧などを教えてもらえるのでしょうか?
実際、子どもの頃や数年前まではまるで興味のなかったお菓子に、突然興味を持ったりするじゃないですか。私の場合、それは最中です。17歳の頃の私なら、片手でがっつり掴みとったくらい大量のあんこを、最高にパッサパッサしたもので挟む意味がわからなかったものです。しかし、30年たった現在、公演時の差し入れコーナーに最中を見つけると「…あ」と、朝の電車で憧れの先輩を見つけた時のような「…あ」が漏れます。
最近では、甘納豆も勢いを増しています。17歳の頃の私なら、柔らかい豆に砂糖をまぶしていったいどうしたいんだよ、大人って!! と、校内の窓ガラスを割り歩いたことでしょう。しかし、30年たった現在、公演時の差し入れコーナーに甘納豆を見つけると「…あ」と、帰りの電車で憧れの先輩を見つけた時のような「…あ」が漏れます。
ただ、最中や甘納豆を食べてしまうと胃がいっぱいになり、その後の食事配分に影響が出ます。同じように、憧れの先輩を見つけてしまっても、胸がいっぱいになり、その後の食事配分に影響がでます。
ただ、朝や帰りの電車で、最中や甘納豆を見つけても嬉しいかもしれませんが、公演時に憧れの先輩を差し入れられても、その後どうしていいやら、関係がギクシャクしそうです。もはや残りの人生、人と争ってる時間も惜しくなってまいりましたので、いちいちギクシャクなどしたくはありません。というか、こんなしょうもない文章のせいで、みなさんの貴重な平成時代の数分を奪ってしまいましたね。ギクシャク…してしまいました? 最後はいい感じに締めますので、どうかこれからもギクシャクしないでいただけたら、ありがたいです。
どんな新年号になろうとも、美味しいものや、憧れの人にときめくことのできる、平和な時間がいつまでも続くことを祈ります。

いけたにのぶえ/1971年生まれ、茨城県出身。俳優。幻の劇団「猫ニャー」出身。舞台を中心に活動中。

◎シアタービューフクオカvol.77掲載(2019.2発行)