シアタービューフクオカで絶賛連載中のハイバイ・岩井秀人氏のコラム「岩井の好きな映画」。本誌と併せてお楽しみください!

ハイバイ・岩井秀人コラム【岩井の好きな映画】vol.52「カメラを止めるな!」

「カメラを止めるな!」、さすがに見に行った。僕の周りでは誰一人、批判的な意見を言うものはいなかったのですが、僕はダメでした…。何となく予想はしていたのだけど。まあ、あれだけ「エンタメ」をうたっている映画に、ヤボな意見だともいわれそうですが、どうぞ言ってください。ヤボなんです。多分僕。伏線の数と回収は見事なんだけど、その伏線が回収された先にあるものが「あーそうだったんだ」だけなのが、なんだかなあ、なのです。伏線があり、それが回収された先になるものが、少しでも人のココロの理解だったり、その理解は「人の心を理解することは不可能だ」ということも含めてのものなのですが。まあつまり、伏線が、「伏線回収」のためにしかなっていないのが残念無念でした。
これを古舘寛治さんに話したところ「そうじゃなくて、あれだけ純粋に楽しませることに専念して、それがうまくいっていることを評価するべき」とのことでした。そうですよね、、わかります。でも、僕は作り手がその作品を書いたことで、何か自分の変化なり、発見をしようとした形跡を見つけたいのです。楽しませるためだけではなく。
さて、ところで僕は10月15日から12月5日までフランスにいました。フランスはすごく離婚が多い。結婚しないでパートナーと暮らしてたり、子供もいるけど結婚してないカップルもいる。お互いの連れ子ともども暮らしているケースも多い。街で男性同士と思しきカップルがバギーを押しているのを見た。多層的であるということを「カラフル」、というらしいのだけど、人種も宗教も政治も、みんながおんなじってことはまずない。一人ひとりが違っていて、家族やパートナー、子どもと過ごす時間を生活の基盤としてどうやらとても大事にしている。そして、社会もそれに答えている。日本の有給は、あってないようなものだしね。
僕は去年、取材のために単身フランスにいて、劇場の人が気を使って仕事を入れなかったので、クリスマスイヴのパリで一人ぼっちで過ごしていた。が、クリスマス当日には地元フランス人の家庭のクリスマスディナーに招かれて(取材の一環で普通の家庭をみたいと僕が言った)行ったのだけど、大人の本気のクリスマスを見た。「孫達がいっぱい来る」と聞いたので、「子供達に一粒ずつ配ろう」と日本から「おはじき」を買って行った。が、集まった「孫達」僕より背が高く、全員30~40代だった。家族同士の盛大なクリスマスプレゼントがうず高く積まれている小脇に、こっそりとおはじきの袋を置いてきた。「ワレワレのモロモロ(略してWWNMM)」は自身の身に起きた話を自分で脚本にして演じる、というもので、それを初めてフランス人で作った。すごくバラバラの人たちの話は重くて、カラフルだった。そして彼らはよく喋る。演出プランについても1出すと5位アイディアが返ってくるので最初は稽古が進まなくて、でもその時間はカンパニーには必要だった。日本では経験できないことが、山ほどあった。
その様子は尾野さんという背の高い映画監督が350時間近くカメラを回していたので、近々映画として見ることができると思う。初日開演前にダメ出ししていたらアブダラーが「昼寝したくなったから帰る」と行って自宅に帰ってしまったシーンが残っているといいのだけど。

いわい ひでと/1974年生まれ。劇作家・演出家・俳優、ハイバイのリーダー。「ある女」で第57回岸田國士戯曲賞を受賞。

http://hi-bye.net/

◎シアタービューフクオカ vol.76掲載(2018.12発行)